Aさん「このフォントをとり変えてください。」
Bさん「書体ですか?」
Aさん「もっと太いフォントでお願いします」
Bさん「ウエイトをあげましょうか?」
Aさん「ええ、太いフォントにしてください」
こんにちは。編集制作 津田です。知っているけれど、うまく説明できない。書体とフォントって同じ意味?それともちがう意味? 文字についての基礎用語からご説明いたします。
字体(じたい)
一定の文字体系の一字と視覚的に認識する概念上の中心線。空中に指で文字を書いた時の文字の中心線である骨格を言います。
→新字体(左)・旧字体(右)・一番右下は手書きでの略字体
字形(じけい)
個々の文字の見た目の形状(曲直、角度、つけるか・はなすか、はらうか・とめるか・はねるか)のことを言い、字体(概念上の中心線である骨格)にさまざまな肉付け(エレメント・デザイン)が施されたもの。
→手書き文字・印刷文字(左)・学参文字(右)
書体
表示・印刷などに用いるために、字体を統一的にデザインした文字のスタイルのこと。
→広くはゴシック体・明朝体・教科書体。狭くはリュウミン、新ゴなど
ウエイト
文字の太さ。ウエイト(太さ)を多く持つ書体はまとめてファミリー(例:新ゴファミリー、Helveticaファミリー)と呼ぶこともある
→L・M・B、太・中・細、W3・W6
フォント
元来は欧文活字の用語で1つの書体の大きさごとにまとめられた大文字・小文字・数字・記号類のセットのこと。しかしデジタルフォントはコンピュータ上で文字の大きさを自由自在に拡大縮小できるようになり、文字サイズごとをフォント名で呼ぶ必要がなくなりました。
現在ではコンピュータ画面に表示したり、紙面に印刷(書籍など)したりするために利用できるようにした書体データを「フォント」と呼びます。「フォントデータ」や「ビットマップフォント」「プロポーショナルフォント」などと使うのが正しい使い方だと言われています。
フォントデータ(アイコン)の一例
「書体」と「フォント」は同じ意味ではなかった
「書体」と「フォント」は本来は区別されるべき言葉ですが、同じ意味で使われている方が多く、慣習的に「フォント」は「書体」を含む言葉になっているのが実情です。つまり「書体」の意味を指すときに「このフォントが」と言うことが一般的になっています。
私がデザインを始めた昔むかし、文字といえば、写植をお願いするか、自分でレタリングする時代。アナログデザインの現場にはフォントという言葉は存在せず、書体あるいは、タイプフェイスという言葉しか記憶にありません。
フォントという言葉を耳にするようになったのはMacによるDTPやデジタルプリプレスが加速されてきた頃です。デザイナーが自分で自分のMacに書体を追加するのはごく普通のことでした。MacにFont Dataをインストールすると新しい書体が使えるようになるのですが、この時、デザイナーがFont=書体の意味として誤認識し、使い始めたのではないかと想像しています。
コトバはその時代に合わせて変わっていくもの。正しく意図が伝われば良いものと思います。ただ、本来の正しい意味もアタマの片隅で覚えていても、よろしいのではとも思っています。
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