こんにちは。編集制作 津田です。
MacによるDTPシステムが日本に上陸した1990年頃、中ゴシック体と細明朝体のわずか2書体しか扱えませんでした。デジタルプリプレスが普通の制作システムとなった現在、使えるFontは3000種以上あるとも言われています。そんな中で、今回は、ポリシーを持って設計された書体をご紹介いたします。
UDフォント
最近UDフォントでの文字組が多くなってきました。UDフォントとは「UD=ユニバーサルデザイン」のコンセプトに基づいて設計されたフォントです。
どちらがUDフォントでしょうか?
正解はBです。
具体的には
濁点「゛」や「ヽ」を大きく、母体からしっかり離れています。英数字はアキを大きくし文字のカタチを変形しないようにデザインされています。
上に示した比較サンプルは新ゴシックですが、英数字ではデザインの特徴であるスクエア感をなくして文字のカタチを優先させています。
字間は詰めすぎず、むしろ字間のアキを意識しないとUD本来の目的を達成できません。必ずしも文字サイズを大きくすれば読みやすいとは限らず、字の周りの空間=アキを持たせるため、文字サイズをあえて小さくすることもあります。字間にアキを持たせると行間も十分なアキがないと、目で読取る時にストレスが生じます。自然に目で追える「文字サイズと字間・行間」のバランスを取りながらの文字組が要求されるフォントです。
デザイン性の高い文字も見る環境によってはかすれたりぼやけたりして、視認性が損なわれてしまうことがあります。UDフォントは住所ユニットなど小さな文字サイズになったとしても比較的見やすく、読みやすいといわれていますが、見え方は人によって差があり、UDフォントなら必ず読みやすくなるとは限らないと個人的には思います。
学参フォント
文部科学省の「学習指導要領」にある「代表的な字形」に準拠したフォント。
「漢字を書いて覚える時期の子供たちの教科書に、簡略化された字では間違えて覚えるではないか。けしからん!」という事で生まれた学参フォント。
左が一般的なフォントで、右が学参フォントです。学参とは学習参考書の学と参です。モリサワフォントでは書体名のアタマに「G」が付き、フォントメニューでは「G-OTF リュウミン Pro M-KL」と表記されます。学参フォントのもっとも顕著な特徴は、普段書く文字とできるだけ同じ形になるように設計されています。 手書きの文字と印刷の文字との差異をなくし、視覚的に筆画がわかりやすいデザインにすることで、教育の現場に適した書体設計になっています。
ただし、カタログや情報誌で文字組すると、手書きに近い字体・字形ゆえに、ひと文字ずつ踊ったようにバラついた印象の組み上がりになり、文字組では、詰めと行間設定の調整が難しく、扱いにくい書体だと思います。
高速道路の表示文字。瞬時に正しく情報を伝える使命を持っています。うまく細部を省略・簡素化していると思います。
文字や記号などは、情報を受取り側に正しく伝えるのが目的です。言い換えると正しく伝われば字体や字形を思い切ってデザインしてもいいと思います。我々をとりまく文字の世界は、とっても奥深いと思いませんか。
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