こんにちは、DCDビジュアルデザイン・チームの後藤です。今回は『Virtual Cinema』の模様をレポートしたいと思います。
『Virtual Cinema』とは
『Virtual Cinema』とはSXSW2018にて開催された、VR作品を集めた展示です。ホテルのホール全体が展示スペースとなっており、展示されているすべてがVR作品になっています。3日間開催されたのですが、常に大変な人気で、人気のコンテンツには10時間待ち(!)なんてものもありました。順番待ちにITが有効活用されていたのも興味深かったです。係員の持っているiPadに名前と携帯番号を入力しておけば、列に並ばなくても順番待ちをすることができるようになっていました。スマホから自分の番が来るまでの残り時間を確認することができ、番が来たらショートメッセージを受け取ることができます。ここに掲載した写真だとそれほど並んでいないように見えますが、これはキャンセル待ちの列なのです。
今回は、この『Virtual Cinema』に展示されていた数多くの作品の中から、個人的に気になった作品をピックアップしてご紹介したいと思います。
Isle of Dogs (犬ヶ島)
『グランド・ブダペスト・ホテル』(傑作です)のウェス・アンダーソン監督によるストップモーションアニメ映画『犬ヶ島』。日本のメガ川崎を舞台に風変りな犬たちが活躍する映画で、その制作の裏側をVR化したものがこちらの作品になります。360度アニメの場合、視線の誘導が難しく、真後ろを向く人が少ないので、前方180度で出来事を完結させることが多いのですが、こちらのVRでは、前方180度には体験者に語り掛ける犬のストップモーションアニメを、後方180度にはその制作風景を展開するといった工夫がなされています。体験スペースは回転イスになっているので、くるくると回りながら好きな場所を見ることができるようになっています。吹き替えを行った役者の表情と、アニメの犬の表情を見比べたり、遊んでいるスタッフを見つけたりと、たくさんの発見があります。
後日YouTubeにもアップされました!
Greenland Melting
全体の80%以上が氷と雪に覆われている国、グリーンランド。そのグリーンランドの氷は、科学者の予想を超えて、年々、加速度的に溶けているそうです。このVRは、360度キャプチャーを使ってその現状を記録し、以前はどのあたりまで氷河が存在したのかを見比べられるようにすることで、問題の深刻さを浮き彫りにします。環境問題を視覚的に訴える社会派VRです。
こちらはプレビュー版の動画です。
The Atrium
Leap Motion を使ったモーションキャプチャーや、表情認識、動く床(?)など、様々なデバイスを駆使したVRです。傍に設置されたモニターとコントローラーを使って、第三者がVRの世界に介入できるようにもなっているそうです。奇抜なビジュアルも含めて、かなり実験的な作品になっています。大変な人気で並んでいる人が多く、試すことができていないので、実際にどんな体験ができるのかわからないのが残念です。
プロモーション動画です。
RONE VR
Lester Francois というストリートアート作家の作品をテーマにしたVRです。自由に移動できるインタラクティブな美術館のパートと、ストリートアートの描かれている場所や、その制作風景を360度動画で見せるパートの組み合わせになっています。ストリートアートは持ち運びができず、劣化が激しいアートです。さらに、周囲の光景や環境音と密接にかかわりのあります。そんなストリートアートを記録し、体験させるこの作品は、VRの持つ特徴を存分に活かした作品だと思いました。
まとめ
ホール全体にVRコンテンツが集合している光景は圧巻で、展示されているコンテンツはいずれも個性的な作品でした。どのコンテンツも人気で待ち時間が長く、体験できなかったものが多かったです。改めてVRコンテンツの注目の高さを実感しました。