「DCDに提案いただいたコンセプトが、私たちの宝となりました。」
八王子市学園都市文化ふれあい財団 芸術文化担当部長兼芸術文化振興課長 米倉楽様(中央)
株式会社大伸社コミュニケーションデザイン
クリエイティブディレクター 川島圭治(左端)
プロデューサー 阿部良介(右端)
ブランディング実績と、アートの知見があるDCDに任せたいと感じた
はじめに、八王子で芸術祭を実施することになった背景をお聞かせいただけますでしょうか。
米倉様
これまで八王子市では、「八王子音楽祭」というイベントを2008年から全12回実施していました。しかし、会場である八王子市内のホールは、市外から離れた地域の住民の皆様には参加しにくく、音楽以外にも幅広く芸術に触れることのできるイベントになっていませんでした。また、八王子市民を対象とした世論調査の結果でも、文化芸術活動への参加頻度の結果が年々横ばいとなっており、何とかしたいという想いから10年に渡る巡回型の芸術祭を実施することを決めました。
実施にあたっては、コンセプトからブランディング戦略を立て、デザインだけでなく広告等まで総合的にプランを設計できる企業様と共に進めたいと思い、コンペを実施しました。その中でも株式会社大伸社コミュニケーションデザイン(以下、DCD)にお願いしたいと考えたのは、担当ディレクターとなる川島さんと、ブランディングに注力しているDCDの実績に魅力を感じたからです。また、実際にお会いした際も、レスポンスの速さやこちらの話している内容を的確に理解いただけていると実感したため、DCDに決定してよかったと感じました。
川島(DCD)
ありがとうございます。私は元々、地域と繋がりを持つ案件に興味を持っていたので、DCDとして、このような公共の案件に携わることができると決まった時はとても嬉しく感じました。
弊社では「企業様にできること」ももちろん数多くありますが、それを超えた「人のためにできること」のノウハウをたくさん持っています。それを活かし、新たなことにチャレンジできる機会になるのではないか、と気持ちが高まりましたね。
ワクワクする提案内容に、選んで間違いはなかったと実感
プロジェクト開始時に、10年間の芸術祭のタイトルとメインビジュアルをご提出させていただきました。その際の印象はどのようなものでしたか?
米倉様
初めに見た時から非常に良い印象を持ちました。素敵なデザインと提案内容に、とてもワクワクしたのを覚えています。DCDにお願いするという決断は間違っていなかったと感じましたね。財団内でも非常に好評でした。
川島(DCD)
美術系の大学出身のデザイナーや、アートが好きなスタッフと共に、どのようなものであれば八王子市民の皆様に楽しそうだと感じてもらえるか、試行錯誤しながら作り上げたものだったので、そのようなご感想をいただけて非常に嬉しいです。
その後、この10年間がどうあるべきかを改めて定義する必要性があると弊社からご提案。芸術祭のキュレーション実績のある外部メンバーをアサインし、コンセプトの立案に取り組んでいきました。その過程ではどのようなことを感じられましたか?
米倉様
私自身ブランディングの知識が充分でなかったこともあり、当初理解しづらい部分もありました。
実際に他の芸術祭を視察し、どんな作品やアーティストを盛り込みたいかを考えてはいましたが、走りながら考え、考えながら作るという試行錯誤の状況だったので、そこでイメージできた願いやビジョンやメッセージを、コンセプト・言葉として皆が分かりやすい形でまとめられていなかったのです。
そんな中、DCDからコンセプトの明文化の必要性を改めてご説明いただきました。私たちの想いに耳を傾けてヒアリングしていただいた上で共に現地を視察し、組み立てていただいたコンセプトとそのコミュニケーションの過程は、今では宝となっていますね。
川島(DCD)
企業ブランディングを行う際も、コンテンツやアウトプットが先行してしまう企業様は多くいらっしゃいます。ですが、本来はまず「なぜ」から始まり「何をすべきか」を考え、そこから「どんな方法をとるべきか」という詳細を決めていくことで、最終的なアウトプットの効果を出すことができます。大元になる「なぜ」や「何をすべきか」が固まっていない状態で進めてしまうと、アウトプットを行ってもバラバラに見えてしまいますが、「なぜ」「何を」に当たるコンセプトがきちんと固まっていることで、軸がぶれずに進めることができます。
米倉様
コンセプトが、ブランディングの要となる、ということですね。
元々、コンテンツが先行していることに課題意識を持ってはいましたが、八王子のアーティストをリサーチし具体的なイメージが先だって生まれていたため、それに引っ張られてしまいました。そこを読み取りコンセプトにまとめて改めてご説明いただけたことで、そうだ、これが言いたかったことだ、大事なポイントも示していただいた通りだと合点がいきました。財団内のメンバーや外部への説明でもコンセプトや事業の方向性を理解してもらいやすくなり、その後もスムーズに動くことができたと感じています。
DCDのスケジュール管理力で、最短での納品が実現
コンセプトが決まったのち、メインビジュアルやパンフレット、LPなどの制作を進めましたが、進行に関してはいかがでしたか?
米倉様
進行管理としてDCDから新たにメンバーをアサインいただいたことで、短期間で非常にうまく進めていただくことができました。次から次へとタスクが生まれ、大変ではありましたが、全体のスケジュールをしっかりと管理いただけたことで最短でアウトプットの制作を進めることができたと感じています。ありがとうございました。
進行にあたって、プロデューサーの視点で気をつけていたことはありますか?
阿部(DCD)
今回、財団様の企画・ブランディングのメンバーが2人と非常に少なかったため、我々DCDが入ることでどうサポートできるかを考え、PMP(Project Management Professional)の資格を保有するプロジェクトマネージャーの林をアサインしました。アウトプットはクリエイティブディレクターの川島に、プロジェクトマネジメントは林にそれぞれ任せたことで、全体を通して安心して進めることができたのではないかと思います。
こうした進行を経てできあがったのが、メインビジュアル・ロゴ・LPサイトです。このアウトプットに対しての評判はいかがでしたか?
米倉様
財団内や、来場いただいたお客様、さらに参加いただいたアーティストからも非常に好評でした。10年の芸術祭が始まるという期待感を含み、かつ初年度の地域やテーマから手描きのようなタッチが高尾・恩方の自然を想起させて、求めていた柔らかさと有機性が表現されました。デザイン上に、住む人々の多様性が表現されているという意見をいただきましたね。
アウトプット全体としても、社会との繋がりを感じられるものとなり、そのイメージが来場いただいた皆様や関係者の中に残っているようなので、ブランディングにも繋がっていると感じています。
川島(DCD)
ロゴに関しては、音楽フェスに訪れた際に見かけたロゴのテイストが八王子の芸術祭にピッタリだと感じ、そのデザイナーに打診して進めました。元々芸術祭自体を、八王子市民に向けた馴染みやすいものとなるように進めていたので、ロゴデザインも高尚なものや親しみの欠けたデザインは避けたいと思っていました。そんな中、デザイナーが制作した今回のロゴデザインは、手描きならではの温かみや馴染みやすさも感じられるものだったので、依頼してよかったと感じました。
米倉様
ロゴデザインについては、形を色々とシミュレーションしていただき、巡回型の芸術祭であることを一番伝えやすい円形のものに決定しました。実際にこのロゴを見せながら芸術祭を説明すると、巡回型であると覚えていただきやすいですし、名刺代わりとなるのでこのデザインに決定してよかったなと感じています。
メインビジュアルや、それらを展開するLPなどへのこだわりを教えてください。
川島(DCD)
芸術祭のリリースが夏前だったこともあり、LPは夏の自然を表現するデザインにしました。その後、開催時期に合わせて季節ごとの自然の移り変わりを感じられるデザインに変更し、本サイトを公開。高尾・恩方の自然の良さを視覚的にも伝えられるものを意識しています。
また、サイト内では、開催されるイベントや展示される作品が多かったことから、検索性も考えて制作。数多くのコンテンツを、よりわかりやすくなるように工夫しました。
また、メインビジュアルに則ってアウトプットを展開したことで、一つの芸術祭としてまとまり、訴求もしやすいものとなりました。
今後さらに八王子市民に愛され、共に作り上げる芸術祭としていきたい
八王子芸術祭を終えてからの成果としては、どのようなものがありましたか?
米倉様
一番大きいものとしては、目標として設定していた来場者数を達成した、という成果がありました。他にもこの芸術祭を通して地域や自然の魅力を知ることができた、という声もいただきましたね。
あるアーティストの方から「次回の芸術祭に作品を出展したい」という問い合わせがありました。これも芸術祭ならではの魅力が伝わったからだと感じています。
また、思わぬところでの成果もありました。24年度の採用活動を進める中で、「八王子芸術祭のサイトを見ました。こういった仕事に携わりたいです。」という言葉をいただくようになったんです。予想していなかった成果でしたが、今後そう言ってくれる方々と共に、さらに芸術祭を盛り上げていければと思っています。
今後の芸術祭への展望を教えてください。
米倉様
この先9年間続く芸術祭なので、今回の経験を活かして今後は持続可能な仕組み化を行っていきたいと思っています。また、それぞれの地域を巡る中で、その土地から立ち上がるものに寄り添って何を行うべきか、また、開催時期の社会情勢などに合わせて社会に対してアートで何ができるのかについても考えながら、それぞれの芸術祭に取組んでいきたいと思います。
川島(DCD)
私は、若い頃にアートに携わっていたのですが、その時に得た経験や出会った人たちとのつながりを今回の芸術祭に活かせたのは、非常によかったと感じています。今後芸術祭が回数を重ねるにつれ、関わる人々が美術・芸術に対して感度を高くもち、さらに人々に豊かさをもたらす芸術祭となると良いなと思います。
弊社はBtoBの案件が多いですが、今後は今回のような一般市民に向けた取組みにも力を入れていきたいです。
阿部(DCD)
今まで弊社では企業様のブランディングやプロモーションといった取組みの実施が多かったため、今回のプロジェクトはDCDとしても貴重な取組みとなりました。地域ブランディングのプロジェクトとして、私たちも手探りで進めさせていただきましたが、今までの経験や知見を活かしより良いご提案ができたのではないかと思っています。
また、10年間続く芸術祭の初年度に携わらせていただいたことは、とても素晴らしい経験になったと共に、私たちのビジョンでもある「共に考え実践する価値の共創パートナー」を体現できたのではないかと自負しております。
残り9年間で、八王子芸術祭は色々な地域を巡回しながら、八王子市内はもちろん、市外も巻き込んで成長していくイベントになっていきます。
八王子芸術祭のブランディングは、今回のコンセプト策定で終わりではありません。今後に向け我々も「価値の共創パートナー」として、ご支援を続けていきたいと思います!