こんにちは。ビジュアルデザインの堀江と企画制作の後藤です。
本日はSVVR2017での、教育分野のセッションの様子をお届けします。
「VRは本当の学習を作り出せるか?」というタイトルで講演を行ったのはFoundry10という会社です。Foundry10は効果的な教育プログラムの研究に取り組んでいる企業で、近年、教育向けのプログラムにVRを取り入れています。彼らは、その豊富な経験からわかった、VRを使用するうえで起こりうる問題点、およびその可能性を今回のセッションで共有しました。
教育関係のVRを作るうえで考えなければならないこと、問題になることとして、彼らは下記を挙げています。
・時間をどれくらいに設定するか
・直観的な操作ができるか
・行動に意味付けをさせられるか
(なぜこのような行動をしなければならないのかを説明できるようにする必要がある)
・移動をどうするか
(Google Cardboardなどではコントローラーがないので移動方法としては基本的に行きたい場所の注視を使うことになる)
・認識のしやすさ(見やすさ、わかりやすさ)
・ヘッドセットが一人用であること
・高さ
この中でも特に、興味深いのは最後の高さです。ほかの項目はVRを作るうえでは、その対象にかかわらず問題になりやすい項目なのですが、高さというのは子供や学生向けに独特な点で、現状のVRコンテンツはほとんど大人向けに作られているため、机の高さが高かったり、あるいは空中に浮いている感じになってしまったりということがあります。
これとは逆に、可能性を感じる点として彼らが挙げたのは経験に関することです。VRはその体験者に実際にその場にいる、実際にその経験をしているという感覚を与えられることがVRを体験した学生へのアンケートで示されています。
つまりVRには、単なる知識の学習だけではなくて経験の学習をさせることができる可能性があるのです。例えば、VR空間の中で大勢の人に見られると緊張し、煙に囲まれると煙たい感じがし、辺りが暗闇だと恐怖を感じるといったことがあるそうです。これらを利用すれば、例えばプレッシャーのかかる状況を再現して苦手なものを克服させたり、危険な状況での対処を学んだり、危険な状況を経験させてそのような状況に近づかないよう教えたりといったことが可能になるかもしれません。
また、これからの学生向けVRのアイディアとして、クリエーションツール(ペインティングや粘土など)、ソーシャルVR、危機管理のVRなどがあるそうです。
また、子供に人気なタイトルとしては、Tilt Brush、the Blu、Modbox、Job Simulator(いずれもHTC vive)を挙げていました。
MATTERvrのDaniel Gregoireも教育向けのVRについて講演を行いました。これまで子供たちは博物館や科学館でしか、体験型の学習(たとえば物の動く仕組みや自然の仕組みなど)ができなかったが、VRを使えば、安全なところにいながら様々な体験をすることができ、普段では行けないようなところに行けるようになると語っています。
なかなか行けない場所や、入るのが危険な場所の体験、例えば飛行体験などもできます。
VRを使えば、好奇心が旺盛な子供たちは多くのことを学び取ることができるだろうと彼は語ります。
また、彼が考えるこれからの課題としては、報酬(動機付け)、ソーシャル性、拡張の必要性が挙げられるそうです。また、彼は現在、建設当時のタージマハルを再現する歴史学習プロジェクトに取り組んでいるそうです。彼のチームは調査を大切にしているそうで、それは例えば歴史上の人物がどんな服装をしていたのか、当時の建築はどのようなものだったのかなどです。これらの史実を忠実に再現することで、本当に没頭できる教育に繋がると彼は考えているそうです。
Marin County Office of EducationのDane Lancasterも教育分野でのVR活用について語りました。VRはすでに多くの教育現場で使用されています。その例としては科学の勉強や、医療、気候変動訓練などが挙げられます。
彼は学生への実験にてコンピュータ画面を使った従来のコンテンツよりも、VRを使ったコンテンツによる教育のほうが学習効果が高かったことをデータで示しました。
また、VRの良さを生徒に聞いたときに、楽しいだけでなく、インタラクティブ性があると答えたことに彼は注目しています。
課題としては、セットアップのしやすさ、毎回動くこと、わかりやすいインターフェース、VR酔いを減らすことなどを挙げています。さらに見た目の良さも必要だとしています。
また、これからの課題としてはコンテンツの量、学生のプライバシー保護、柔軟なAIなどを挙げています。
以上、SVVR2017、3日目のセッションの模様をお届けしました。