リブランディングとは、既存のブランドを時代の変化や市場のニーズに合わせて再構築することを指します。リブランディングには大きく分けてコーポレートブランディングと製品(サービス)ブランディングの2種類があります。
〇コーポレートブランディング
企業全体のブランドイメージを再構築するもので、企業のミッションやビジョンが重要な要素となります。ミッションやビジョンは企業の存在意義や方向性を示し、ステークホルダーとの信頼関係を築くために不可欠です。これにより、企業の価値観や目指す未来が明確になり、社員のモチベーション向上や一致団結を促進します。コーポレートブランディングは、企業の全体的なアイデンティティを見直し、経営理念や企業文化を再定義することで、企業の存在意義や社会的な役割を強調します。
〇製品(サービス)ブランディング
特定の製品やサービスのブランドイメージを再構築するもので、USP(独自の売り)を明確にすることが重要です。顧客に対する製品やサービスの価値を強調し、市場での競争力を高めます。製品ブランディングでは、商品の特徴や利点を際立たせ、顧客のニーズに応えることでブランドの魅力を最大化します。
- 目次
リブランディングのメリットとデメリット
メリット
- 市場開拓
新たな顧客層を獲得し、市場での競争力を高めることができます。これにより、売上の増加や新しい市場への進出が可能になります。 - ブランド価値の向上
既存ブランドの資産を活かしつつ、新しい価値を付与することでブランドイメージを刷新します。これにより、ブランドの認知度や信頼度が向上し、顧客との関係が強化されます。 - 社内の活性化
新しいブランド戦略の導入により、従業員のモチベーション向上やエンゲージメント強化が期待できます。社員が新しいビジョンや戦略に共感し、一丸となって取り組むことで、企業全体の活性化が図れます。
デメリット
- コストの増大
ロゴやパッケージの変更、プロモーション活動などに多額の費用がかかる場合があります。これにはデザイン費用、広告費用、キャンペーン費用などが含まれます。 - リスクの増加
ブランドイメージの変更が顧客に受け入れられないリスクが伴います。特に、従来のブランドに愛着を持つ顧客からの反発が予想される場合があります。 - 長期的な取り組みが必要
ブランドの再構築には時間がかかり、即効性がない場合があります。リブランディングの効果が現れるまでに時間がかかるため、短期的な成果を期待するのは難しいかもしれません。
リブランディングが必要なタイミング
- ブランドの陳腐化
長年使用されてきたブランドが新鮮さを失い、売上が低迷している場合。市場や顧客のニーズが変化しているため、ブランドの再構築が必要です。 - 競争力の低下
競合他社との差別化が難しくなり、価格競争に巻き込まれている場合。ブランドの強みを再評価し、新たな競争力を持たせる必要があります。 - ビジネス環境の変化
新しい技術の登場や市場の変化に対応するためにブランド戦略の見直しが必要な場合。市場のトレンドや消費者の行動が変わる中で、ブランドも進化する必要があります。 - 経営者の交代
新たな経営者のビジョンや戦略に基づき、ブランドの再構築が求められる場合。経営者の交代は、企業の方向性を大きく変えるタイミングであり、新しいビジョンを反映したブランドが必要です。
リブランディングの進め方
コーポレートブランディング
- 現状分析
○ペルソナとカスタマージャーニーの把握
企業のターゲット顧客を明確にし、顧客がどのようにブランドと接触するかを理解します。
顧客の期待や顧客が企業に対して評価しているポイントを把握することで企業はその期待に応えられているか、また期待や評価を把握できているかを確認します。
数多くの企業では顧客が評価しているポイントと自社が強みと認識している部分にGAPが生じていることが多く、このGAPの是正を行っていくことがブランディングの重要なポイントになります。
上記のような調査結果から、顧客のニーズや期待に応えるブランド戦略を策定することが重要です。
○社員の理解
顧客の声と共に同じくらい重要になることが、社員の声を把握することです。現在の会社やサービス、製品への評価だけでなく、自社のビジョンに対しての共感度や会社全体が実行していることに対しての評価など、自社のビジョンが社員に浸透しているのか、同じ方向を向けているのか?など社員から得られることもたくさんあります。現状と理想を収集し、こちらも現状と理想の間にGAPが無いかを確認することが重要になります。そのGAPを正しく埋めることを行いながら今後のビジョンを共有します。社員全員が一貫したメッセージを伝えることが重要です。
○市場環境の分析
市場のトレンドや競合状況を分析し、ブランドの強みと弱みを明確にします。競合他社との差別化ポイントを把握し、新たな戦略を策定します。 - ブランド戦略の策定
企業全体の方向性や戦略を決定し、ステークホルダーとの信頼関係を強化します。ミッションやビジョンを基に、新しいブランドアイデンティティを確立します。これにより、企業の価値観や目指す未来が明確になります。 - 新ブランドの浸透
社内外に対して新しいブランド戦略を浸透させ、従業員やステークホルダーの理解と協力を得ます。全社員がリブランディングの意図や意義を理解し、積極的に取り組むことが重要です。従業員の協力を得るためには、研修やワークショップの開催が効果的です。 - 施策の実行
ロゴやコミュニケーションの変更、プロモーション活動など具体的な施策を実行します。具体的な施策には、ロゴの刷新、広告キャンペーンの展開、SNSでのプロモーションなどが含まれます。
製品(サービス)ブランディング
- 現状分析
○ペルソナとカスタマージャーニーの把握
製品やサービスのターゲット顧客を明確にし、顧客の購買行動を理解します。これにより、顧客のニーズに応える製品戦略を策定します。
○社員の理解
製品やサービスへの評価を社員から収集し、今後の方向性を共有します。社員全員が製品の価値を理解し、顧客に一貫したメッセージを伝えることが重要です。
○市場環境の分析
製品やサービスの市場トレンドや競合状況を分析しながら、顧客が求め、競合他社が実施できない自社独自の強みを創出しUSPとして再定義します。競合他社との差別化ポイントを把握し、そのポイントがユーザーに伝わるようにどのような表現やクリエイティブ、プロモーションが必要か?を検討し新たな戦略を策定します。 - ブランド戦略の策定
製品やサービスの方向性や戦略を決定し、ターゲット層やポジショニングを見直します。USPを強調し、ブランドの独自性を明確にします。これにより、顧客に対する製品の魅力を最大化します。 - 新ブランドの浸透
社内外に対して新しいブランド戦略を浸透させ、従業員やステークホルダーの理解と協力を得ます。全社員がリブランディングの意図や意義を理解し、積極的に取り組むことが重要です。従業員の協力を得るためには、研修やワークショップの開催が効果的です。 - 施策の実行
パッケージの変更、広告キャンペーンの展開、顧客体験の向上など具体的な施策を実行します。具体的な施策には、製品パッケージの刷新、広告キャンペーンの展開、顧客体験の向上を図るためのサービス改善などが含まれます。
リブランディングの成功のポイント
- 既存ブランドの資産を活かす
これまで築いてきた信頼や認知度を維持しつつ、新たな価値を加えることが重要です。既存のブランド資産を活用することで、新たなブランドが顧客に受け入れられやすくなります。 - 客観的な視点を持つ
内部の視点だけでなく、外部の視点からブランドの強みと弱みを冷静に評価します。顧客や市場のフィードバックを積極的に取り入れることが重要です。 - 時間をかけて取り組む
短期的な効果を期待せず、長期的な視野でブランドの浸透を図ることが大切です。リブランディングは長期的なプロセスであり、継続的な努力が求められます。
顧客理解とCX(顧客体験)の把握
ここまで多くのポイントや進め方を紹介してきましたが、リブランディングの成功には、顧客理解とCXの把握が不可欠です。顧客のニーズや期待を深く理解し、それに基づいてブランド戦略を策定することで、顧客とのエンゲージメントを強化します。また、CXの向上により、顧客満足度を高め、ブランドロイヤルティを築くことが重要です。CXの改善には、顧客のフィードバックを積極的に収集し、サービスや製品の改善に反映させることが求められます。
〇インサイトの把握
自社の強みや世間の評価を一致させるために、顧客インサイトを把握することが重要です。市場調査や顧客フィードバックを通じて、ブランドに対する顧客の認識や期待を正確に理解し、その情報を基にブランド戦略を再構築します。インサイトの把握には、定期的な市場調査や顧客アンケートだけでなく、自社にとって大切な顧客の声を聴くことが最も効果的です。また顧客に、わが社のイメージは?、わが社の長所は?と質問しても、とっさにこたえられる方は少ないですし、貴社への評価を正しく言葉にできる人も多くはありません。聞き方にも工夫が必要なため、自社で顧客の声(インサイト)が聞けない場合は、専門のプロに頼むことで、顧客の声を正しく把握するように努めましょう。
リブランディングの成功事例
ヤンマー
ヤンマーは、創業100周年を機に、ブランドイメージの統一を目指してリブランディングを実施しました。アートディレクターの佐藤可士和氏を起用し、ロゴや製品デザインを刷新。これにより、グローバル市場での認知度を高めることに成功しました。
湖池屋
湖池屋は、新社長の就任をきっかけに、「妥協なく一番おいしいポテトチップスをつくる」という原点に立ち返り、リブランディングを行いました。新商品の「KOIKEYA PRIDE POTATO」を発売し、プロモーションもインパクトのある内容にすることで、ブランドイメージを刷新し、売上を大幅に伸ばしました。
祇園辻利
1860年創業の祇園辻利は、ペットボトルのお茶の普及により、急須で入れるお茶の良さを伝えるため、商品パッケージをリニューアルしました。折り紙をモチーフとしたパッケージは、和の心を伝えるデザインで、グッドデザイン賞を受賞するなどの成功を収めました。
資生堂
資生堂は、グローバル市場での中核ブランド「SHISEIDO」の位置づけを明確にするために、リブランディングを実施しました。商品や宣伝ビジュアル、ブランドロゴを一新し、顧客との共感を生み出すことを目指しました。
リブランディングは、企業のブランド価値を再定義し、市場での競争力を高めるための重要な戦略です。適切なタイミングで実施し、慎重に計画を立てることで、企業の成長と成功につながるでしょう。
また、せっかく自社の価値を把握できたとしても、その価値が社内外に、正しく魅力的に伝わらなければ、意味がありません。
社内でのエンゲージを高めるためにも、採用活動で他社との差別化を図るためにも、競合より自社優位性を理解頂くためにも、より魅力的に伝えていくことにはクリエイティブが重要となります。