SPEAKERS
A J HASSAN; Sr R/GA Chicago
TODD KAPLAN; PepsiCo
『パーパス・ドリブン・ブランディングの概念とケーススタディ』
こんにちは。DCD Webチームで、現在ニューヨーク在住の谷口です。SXSW2018レポートをお届けします。このセッションではR/GA社のA J HASSAN氏、PepsiCo社のTODD KAPLAN氏が、「パーパス・ドリブン・ブランディング」の考え方と、デザインによって、どのように「パーパス・ドリブン・ブランディング」を実現できるのか、LIFEWTRのキャンペーンをケーススタディとして紹介していました。
■パーパス・ドリブン・ブランディングとは
近年アメリカで新しい考え方として提唱されている「パーパス」という考え方について、スピーカーはまず以下の3つのキーワードを提示しました。
– 環境保護・社会的貢献(cause); 環境保護・社会的貢献によってユーザーニーズを満たす
– 文化的(cultural);(文化的に影響を与えるためには)自分たちが何者かを明確に表現する必要がある
– コア(core); 一貫性のある考え、強み
KAPLAN氏は、パーパス・ドリブン・ブランディングのベースにあるのは「なぜ自分たち(ブランド・企業)は存在するのか」「世界、社会の中で何のために存在しているのか」「自分たちブランドは社会と文化にどう影響を与えているか」と問うことにある、と言います。
パーパス・ドリブン・ブランディングは、「ブランドが存在する理由」「存在意義とは何か」すなわち「パーパス」を考えることでブランドを確立していくという考え方だと言います。
近年多くの企業がサスティナビリティを重要な課題としてとらえ、ビジネスと社会的貢献がより関わり合っていく中で、存在意義に重点を置いた「パーパス」を取り入れる企業は多いのではないでしょうか。
■パーパス・ドリブン・ブランディングが重要と考える理由
ミレニアル世代は消費者として今後中心になっていく存在であることから彼らの志向に注目しておく必要があると言います。またミレニアル世代の80%は強いこだわりを持っているのだ、と加えました。
その上でHASSAN氏は、人々、特にミレニアル世代はブランドに参加し、つながりたいと思っている。また人々は「カルチャー」に注意を向けるのであって、広告などの表面的なものではない、と言います。また彼らはブランドが何を伝えようとしているのか知りたがっているし、それらをシェアするのが好き。彼らは社会に何か影響を与えたいと思っているが、自分たちだけでは何もできないと思っている、と言います。
その中でパーパス・ドリブン・ブランディングは以下のような効果をもたらすことができる、とまとめました。
- 社会や文化に影響を与えることができる
- 彼らのこだわりに応えることができる
- 消費者との有意義なつながりを構築することができる
■どのようにすれば効果的か?
HASSAN氏は、有言実行が信頼につながり、信頼性・確実性(Authentic)はブランドにとって重要なキーになると言います。また何を表現したいのかをきちんと伝えることも大切だと言います。
これらを以下のキーワードでまとめました。
– Be it. …自分らしくふるまう
– Do it. …行動で裏付けする
– Say it. …自分の信じることをシェアする
■ケーススタディ:LIFEWTR
KAPLAN氏はPepsiCo社で実施したLIFEWTRの#ArtByAWomanキャンペーンをケーススタディとして紹介しました。
KAPLAN氏はまず、以下の調査結果を紹介しました。
-調査結果1:
・ボトルウォーターを飲む57%の人が、“インスピレーション”は充実した人生を送るのに必要不可欠だと考えている
・ミレニアル世代の70%は、創造性は成功のために必要であると考えている
・ビジュアルアーティストとして活躍する人のうちの51%が女性だが、美術館などに保存されるアートのうちたった5%が女性アーティストによる作品である
そこでPepsiCo社はペットボトルに女性アーティストによる作品をデザインした「LIFEWTR」を開発、キャンペーンを実施することで人々の興味を掻き立てるとともに、女性によるアート作品を広めるアイディアを提示しました。
– LIFEWTRの目的:創造性の源(=アート)をペットボトルデザインを通して紹介するとともに、人々の創造性を高めていく
-定義:アートは人々のインスピレーションを喚起させる。またインスピレーションは「水」のように私たちにとって不可欠なものである
LIFEWTRは4つのキャンペーンを実施、そのうち2つが紹介されました。
-キャンペーン1:
・女性のアートをもっとオープンにしよう
・世界中を女性たちのアートでいっぱいにしよう
・ハッシュタグ #ArtByAWoman
キャンペーン2では以下の調査結果をもとにキャンペーンが実施されました。
-調査結果2:
・80%の学校がアート教育をやめ、資金削減をしなければならない場面に直面している
・幼稚園児のうち84%が高い創造性を持っているのに対し、高校生ではほとんどいない
・アート活動に参加した子供は、参加しない子供と比べ成績が4倍以上であることが認められた
-キャンペーン2:
・ハッシュタグ #BringArtBackToSchools
LIFEWTRのキャンペーンは多くのミレニアル世代の人々に影響を与えたとともに、女性アーティストの作品を広め、また社会に対してアートに関する様々な課題を提起し大きな影響を与えました。
LIFEWTRの#ArtByAWomanキャンペーンから、「ブランドが存在する理由」「存在意義とは何か」を問うパーパス・ドリブン・ブランディング手法の今後の広がりを印象付けられました。