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パーパスブランディングの定義と概要
パーパスブランディングとは、自社の存在意義を基に実施するブランディング戦略です。
- なぜその企業が社会に存在しているのか?
- どんな貢献を社会に行うのか?
企業の原点となる考えや根拠を表すパーパスは、「企業理念」「経営理念」と同義と捉えられることもあります。
企業の存在意義を対外へ発信し、社会からの支持や共感を集めて企業の価値を高める戦略であり、企業の存在意義である「パーパス」を明確にし、それを基にブランド戦略を展開することによって、自社の価値を高めることを目的としています。 近年、多くの企業が自社の存在意義から自身を見つめなおし、改めて自社の存在価値から定義し直し、発信する、このパーパスブランディングの取組を始めています。
1. パーパスとは?
パーパス(Purpose)は、一般的には「目的」「意図」を示す言葉ですが、ビジネスにおいては「存在意義」という意味で使われます。
例えば、Googleの「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにする」や、P&Gの「現在そして未来の、世界の消費者の生活を向上させる」といったものがパーパスの例です。
弊社、大伸社コミュニケーションデザインでは、
『感動と感謝の溢れる未来をつくる』ことを存在意義とし、数多くの企業様の経営課題の解決支援を行っております。
https://www.daishinsha-cd.jp/company/vision/
2. パーパスブランディングの目的
パーパスブランディングの目的は、企業ブランドの社内外浸透を指します。自社の事業内容や提供するサービスだけでなく、その事業によって世の中にどのような価値がもたらされるのかを社内外に訴求することで、根強いファンの獲得や社員のモチベーション向上を実現します。
パーパスブランディングと一般的なブランディングとの違い
パーパスブランディングと従来のブランディングは、その目的や手法において大きな違いがあります。
従来のブランディングは、主に商品やサービスの認知度を高め、売上を増やすことを目的としています。例えば、特定の製品が他社製品よりも優れている点を強調し、消費者に選ばれるための努力をします。このためには、広告やプロモーション活動が重要な役割を果たします。
一方、パーパスブランディングは、企業の存在意義そのものを中心に据えたブランディング戦略です。これは単に商品の売上を増やすだけではなく、企業がなぜ存在するのか、どのような価値を社会にもたらすのかを明確にし、それを基にブランドを構築していくものです。パーパスブランディングは、消費者や投資家、従業員など、すべてのステークホルダーに対して企業の本質的な価値を伝えることを目指します。
違いの具体例
例えば、ある企業が「環境保護」をパーパスとする場合、製品の品質や価格だけでなく、環境に配慮した製造プロセスやリサイクル活動などもブランディングの一部として強調されます。
このような企業の取り組みは、単なる商品アピールとは異なり、社会全体に対して持続可能な未来を目指す姿勢を示します。
統合報告書などでも、価値創造ストーリーなどの策定を行うかと思いますが、短期的な売上目標ではなく、中長期的に社会や世の中にどのようなアウトカムや貢献を行っていくか、ビジョンを達成することでどんな社会が待っているか?を自社内でひも解き分かりやすく発信する必要があります。
マーケティングの差別化
マーケティングの差別化は、パーパスブランディングにおける重要な要素です。
パーパスブランディングを導入することで、企業は市場で独自のポジションを明確にすることができます。これは単に製品の特性を強調するだけでなく、企業の存在意義や社会的価値を前面に押し出すことによって実現されます。
独自性の確立
パーパスブランディングは、企業が他社とは異なる独自の価値を打ち出すことを可能にします。例えば、環境保護を重視する企業は、その取り組みを通じて消費者に対して強いメッセージを送ることができます。このメッセージは、単なる商品の性能や価格競争を超えた、深い共感を呼ぶことができます。
差別化の具体例
例えばスターバックスは、環境保護やコミュニティ支援といった取り組みを通じて、単なるコーヒーチェーンではなく、社会的責任を果たす企業としてのブランドを確立しています。これにより、消費者はスターバックスの商品を購入することで、社会貢献にも参加しているという感覚を持つことができます。
顧客やステークホルダーの共感や信頼を得ることができる
パーパスブランディングは、顧客やステークホルダーからの共感や信頼を得るための強力な手段です。企業の存在意義を明確にし、それを一貫して発信することで、消費者や投資家、従業員などのステークホルダーは企業に対して強い信頼感を持つようになります。
共感の形成
共感は、顧客が企業の理念や価値観に対して感情的に結びつくことを意味します。例えば、ある企業が環境保護をパーパスに掲げている場合、環境問題に関心を持つ消費者はその企業に対して強い共感を覚えるでしょう。この共感は、企業の製品やサービスに対する信頼感を高め、ブランドロイヤルティを強化します。
信頼の構築
信頼は、企業が一貫してその理念を実行し、社会的責任を果たすことによって築かれます。企業が透明性を持って活動し、実際の成果を公表することで、ステークホルダーはその企業に対して高い信頼感を持つようになります。
従業員のモチベーションを高めることができる
パーパスブランディングは、従業員のモチベーションを高める効果もあります。企業の存在意義が明確であり、それに基づいて行動することで、従業員は自分の仕事が社会にどのように貢献しているのかを実感できます。
モチベーションの向上
従業員は、自分の仕事が単なる利益追求ではなく、社会に対する貢献であると認識することで、より高いモチベーションを持って働くことができます。これにより、仕事に対する満足度が高まり、業務効率も向上します。
エンゲージメントの強化
企業のパーパスに共感する従業員は、自分の役割に対してより強い責任感を持ちます。これは、企業全体のエンゲージメントを強化し、組織の一体感を高める要因となります。
マッチング率の高い人材を採用できる
またパーパスブランディングを導入することで、企業は自社の理念に共感する優秀な人材を採用することができます。これは、企業が単に給与や待遇を提供するだけでなく、社会に対する貢献という側面を強調することで実現されます。
理念に共感する人材の採用
企業のパーパスに共感する人材は、企業の理念や価値観を共有し、それに基づいて行動する意欲を持っています。このような人材は、企業に対して強いロイヤルティを持ち、長期的な貢献が期待できます。
また人的資本経営とパーパスブランディングは密接に関連しています。人的資本経営は、従業員の能力や知識、スキルを重視し、これを企業の競争力と成長の源泉とする経営手法です。一方、パーパスブランディングは企業の存在意義を明確にし、社会やステークホルダーからの支持と共感を得ることを目的としています。
パーパスブランディングは、従業員が企業のミッションやビジョンに共感し、働きがいを感じる環境を作り出します。これにより、従業員のエンゲージメントやモチベーションが向上し、結果として人的資本が最大限に活用されます。従業員が自社のパーパスに共感し、日々の業務に意義を見出すことで、企業全体のパフォーマンス向上につながるのです。
採用の具体例
例えば、パタゴニアは環境保護を企業のパーパスとしています。この理念に共感する人材が集まり、企業の活動を支える重要な要素となっています。パタゴニアは、その理念を強調することで、環境問題に関心を持つ優秀な人材を採用し続けています。
SNS活用で企業ブランディングが強固になる
SNSの活用は、パーパスブランディングを効果的に推進するための強力なツールです。SNSを通じて企業の存在意義や取り組みを発信することで、多くの人々に企業の価値観を伝えることができます。
SNSの役割
SNSは、企業が直接消費者とコミュニケーションを取ることができるプラットフォームです。企業はSNSを通じてパーパスに基づくメッセージを発信し、消費者とのエンゲージメントを高めることができます。
効果的なSNS活用の具体例
ナイキは、SNSを活用して多様性やインクルージョンといった社会的課題に対する取り組みを発信しています。このようなメッセージは、消費者からの共感を呼び、ブランドの信頼性を高める効果があります。
パーパスブランディングの具体的な事例とその効果
〇amazon AtoZ
Amazonのパーパス経営は「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」を目指し、イノベーション、多様性とインクルージョン(DEI)、長期的な視野を重視しています。Amazonのロゴに含まれる「AからZへの矢印」は、広範な商品展開と顧客満足を象徴し、顧客中心のビジネスモデルを視覚的に表現しています (JP About Amazon) (JMAM)。
具体的な効果として、Amazonのパーパス経営は顧客満足度の向上や企業ブランドの強化に寄与しています。例えば、顧客に対する迅速な配送サービスや、パーソナライズされたおすすめ機能は、顧客ロイヤルティの向上につながっています。また、DEIを重視することで、社員の多様な視点やアイデアがイノベーションを促進し、持続可能な成長を実現しています (JP About Amazon)。
〇ソニー株式会社
ソニーは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパスを掲げています。このパーパスは、ソニーの全ての活動において一貫して反映されています。ソニーは、パーパスを中心に据えた経営を行うことで、従業員のモチベーションを高め、企業全体の生産性を向上させました。
〇花王株式会社
花王は、「豊かな共生世界の実現」というパーパスを掲げ、社会課題の解決に取り組んでいます。特に環境問題や高齢化社会に対するアプローチを強化し、社会貢献活動を展開しています。花王のパーパスブランディングは、消費者からの信頼を高め、企業全体のブランド価値を向上させることに成功しています。
〇株式会社MOLDINO
株式会社MOLDINOは、日立グループから三菱グループへ親会社が変更するという稀有な経験をした超硬工具メーカーです。どちらも親会社も財閥としての大きなイメージがあるため、親会社イメージにて顧客からの評価や期待が混迷・低下せぬよう、自分たちが顧客から得てきた期待や評価、今後進むべき未来や期待を実際の顧客の声から再度捉えなおし、親会社も含む超硬工具業界の企業の存在意義を再設定しました。
当時EVや水素自動車などまだまだ車業界の中で確固たるシェアを得ている状態ではありませんでしたが、自分たちの事業の中で最も期待と評価と先進性に満ちている領域が『金型加工』であることを導き出し、その領域にフォーカスすることを経営戦略とし、金型領域で持続可能な発展と社会貢献を目指すことを取り決め、その思いを社名に込めました。
金型業界に変革を起こす会社(MOLD+INOVATION)としてMOLDINOという社名にしました。
MOLDINOは、金属加工工具の製造を通じて、顧客の生産性向上と持続可能な社会の実現を目指しています。このパーパスに基づき、技術革新や環境負荷の低減に積極的に取り組んでいます。
Visit Site → https://www.daishinsha-cd.jp/work2/moldino/
パーパスブランディングの注意点
1.ターゲット顧客の設定
パーパスを設定する際、ターゲット顧客を定めてはいけません。パーパスブランディングの目的は社会全体に自社の存在意義を示し、支持や共感を集めることです。ターゲットを設定してしまうと、共感を得られる層が限定されてしまいます。
2. 宣言と実行
パーパスを設定しただけでなく、必ずアクションを起こす必要があります。掲げたパーパスと経営実態がかけ離れていては、信頼を失います。
3. 適材適所の采配
パーパスブランディングには、「適所適材」で人員を配置する考え方が必要です。パーパスを実行するために必要な人材を獲得しましょう。
4. 社内と社外のパーパスを統一
パーパスは「社内向け」と「社外向け」に分けて提示する場合もありますが、双方のパーパスの根幹を統一させ、矛盾がないように設定することが重要です。
まとめ
パーパスブランディングは、企業の存在意義を明確にし、社会からの共感と支持を得ることで、ブランド価値を高める手法です。企業の理念やビジョンをさらに発展させ、自社独自のパーパスを構築することで、長期的な企業成長が期待できます。
企業はパーパスブランディングを通じて、消費者や投資家、従業員など、すべてのステークホルダーに対して強いメッセージを発信し、持続可能な未来を共に築いていくことが求められます。
具体的な効果として、パーパス経営は従業員のモチベーション向上や企業のブランド価値の向上に寄与しています。従業員が自社のパーパスに共感することで、業務に対する誇りややりがいが増し、結果として生産性の向上や離職率の低下が見られます。
また、社会的責任を果たす姿勢が顧客や投資家から高く評価され、企業の信頼性と市場での競争力が向上するメリットを生み、より社会への貢献が行いやすい状態が作れる好循環を生み出すことができます。
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