Webディレクターの多田です。
Web構築のお仕事についてから、早20年余り、数百のWebサイトの構築、運用を経験してきました。何度やっても「そんなはずではない!」「そうだったんですか!」といった良からぬ驚きを毎回経験します。その中でも印象的だったものを厳選し「Webサイトリニューアル10個の落とし穴」と題してご紹介いたします。
そして、このコラムでは、依頼する側、依頼される側、サイトを使用するユーザー、みんなにとって幸せになるWebサイトづくりの架け橋となる「Happy RFP」を導きます。「Happy RFP」を通じて、Webサイトリニューアルをお考えの企業の皆様、ご担当者の皆様のお役に立てれば幸甚に思います。
壱:定量指標の落とし穴
Webサイトの効果を検証する際、わかりやすい定量指標としてWebサイトへの「訪問数」「ユーザー数」「ページビュー数」「直帰率」「お問合せ数」など、アクセスデータを参考にします。
定量指標ですので、当然「数字が上がった!」ことが全て良いことと思えますが、果たしてそうでしょうか?答えは「ノー」です。「質の良い数」が上がることは良いことですが、「質の悪い数」が上がることは良いこととはいえません。例えば、収入と支出です。同じ金額でも収入が上がることは良いことですよね。でも支出が上がることは、必ずしも良いことではありません。Webサイトのアクセス数にもそういった「数の質の罠」が隠れています。
ある日、お客様から「Webリニューアル後のページビュー数が大幅に下がっているがどういうことか?」という問合せが入ったことがあります。焦った私はすぐにアクセスデータを検証しました。リニューアル前後で下がっているのは「ページビュー」だけで、他の数値は上昇傾向だったので不思議に思いました。さらに検証を進めると「商品一覧ページ」のページビューが大きく減少していることに気が付き「そうか!」と思いました。このお客様のサイトでは、リニューアル時に商品検索の仕組みを改善していたのです。リニューアル前は平均して4ページの商品一覧ページを経てから、お目当ての商品ページに辿りつくサイト構造だったのですが、リニューアル後は、1ページ内(ページを遷移することなく)で商品の絞り込みを素早く行える仕組みに改善していました。
1回の訪問あたり、4pv(ページビュー)から1pvに下がるわけですから、1カ月に10,000回訪問したとすると40,000pvから10,000pvに下がるわけです。確かに、その数字の落ち込みだけを見るとサイトの効果が下がったように感じますし、お客様が不安に思われたのも無理はありません。
しかし、30,000回の不要なアクセス(ページビュー)を減らし、ユーザの利便性をあげたわけですから、実はそのサイトのサービスレベルはむしろ上がっているといえるわけです。
★「Happy RFP」に盛り込むべき内容【壱】
=Webサイトリニューアル後の定量指標(増加、削減)とその根拠
例) 成約につながらないお問合せ数を削減し、人材コストを下げつつ、効率的に成約を獲得する。
【定量目標】
・現状:お問合せ数の合計:100件
A=成約数10件、B=見込み客50件、C=成約につながる確率0%の40件
・リニューアル後:お問合せ数の合計:110件
A×1.5倍(15件)、B×1.5倍(75件)、C×0.5倍(20件)
次回は、「弍:同時アクセスユーザー数の落とし穴」についてお話します。