第5回の今回の記事では、より詳細なブランディングの進め方と実際に考えていく上で役立つフレームワークについて解説します。実際にブランディングを行おうとしている方や、取り組み始めたはいいものの次に何をすればいいのかがわからないという方は、ぜひこの記事を参考に一歩を踏み出してみてください。
- 目次
ブランドの役割とブランディングの重要性について
まず初めにブランドについて振り返ってみましょう。
本連載ではブランドの意味を「見聞きした瞬間、頭に浮かぶ独自のイメージ」と定義しています。また、「ブランディング」を日本語に訳すと「ブランド確立」「ブランド構築」などという意味になります。この二つから、「ブランディング=頭に浮かぶ独自のイメージを確立するための努力」となります。
ブランディングの方法は、企業ブランディングなのか、商品ブランディングなのか、採用ブランディングなのかなど、どの分野かによって変わります。
また、ブランディングを行うことで企業・消費者共に大きなメリットを得ることができます。その1つがブランドの「資産価値」を高めることができるということです。
この資産価値を「ブランドエクイティ」といいます。ブランドは蓄積可能な価値で、無形の資産という考え方です。
デービッド・A・アーカー(David.A.Aaker)「Managing Brand Equity」では、このブランドエクイティが含む資産は
- ブランドロイヤルティ(ブランドへの忠誠心や愛着度)
- ブランド認知(ブランドがどれくらい知られているか)
- ブランド連想(ブランド名を聞いた時にユーザーが連想するもの)
- 知覚品質(ブランドの品質への評価)
- 他の所有権のあるブランド資産(ブランドの価値を支え利益を生み出す無形のもの)
としています。
これらを高めることを意識して、ブランディングの戦略を立て、実行することで、ブランドの資産価値を高め、より良いブランディングへとつながるのです。
では、ブランドエクイティを高めるためにはどんなことがポイントなのでしょうか。
重要なことはブランドコアの「企業内での意識の共有」「認知を高める」「継続的に施策を実施する」という3つになります。さらにそのブランドコアを反映するためにどのようなマーケティングを行うのか、どのようなPR方法をとるのかも大切です。例えば認知を高めるにあたって、ターゲットを絞ってInstagramの広告、テレビCMなどのマス広告やWebメディアを活用することも考えられます。
このようにブランドエクイティを高めることを意識し、ブランディングを行うことが重要です。
ブランディングの方法・手順
ここからは、より詳細なブランディングの手順とコツをご紹介します。
手順①ブランディングプロジェクトの目的を設定する
まず初めに大切なのは、ブランディングの目的を明確にすることです。ブランディングの実務の中で意外と多い相談が、過去に行ったブランディングがうまく機能せず、1からやり直したいというものです。失敗の要因を調べていくと、このプロジェクトの目的設計がきちんとなされていなかったことに直面します。つまり、明確な目的や課題を設定する前に、ブランディング活動と称して、ロゴ作りやデザイン統一などを始めてしまったパターンです。
目的が明確でないと、自分達の判断基準が曖昧になり、立ち返ることができる基準がなくなってしまいます。そうなるとさまざまな部署の顔色を伺いながら決定した妥協の産物ができ上がり、失敗に直結してしまうのです。一方、目的がしっかりしていれば、基準が明確となり、様々な優先順位もつけやすくなります。したがって、ブランディングにおいては、「現状の事業の課題は何か?」「ブランディングの活動を通じて何を果たしたいのか?」といったことをまずしっかりと考えることが大切です。
私たちのようなブランディング会社が行う場合は、ブランドオーナーに対して以下のような項目でインタビューを行います。
- 事業展開において大切にしていることは?
- 自社を取り巻く環境について、最近特に感じる変化は?
- 社外・社内とのコミュニケーションにおいて課題に感じることは?
- これからの会社としてのビジョンは?
- 会社として変わる必要があると考えることは?
- 自社らしさについての考え方は?
- 顧客にとってどんな会社でありたいか?
- 従業員およびその家族にとってどんな会社でありたいか?
- 取引先から見てどんな会社でありたいか?
- 社会から見てどんな会社でありたいか?
- ブランディング・プロジェクトに対して期待することは?
- ブランディングによって解決したいこと、目指すゴールは?
手順②現状を分析する
ブランディングの目的がはっきりとしたら、次は現状分析を行います。現状理解では、自社・顧客・社会・競合の4つの視点から自社らしさのヒントを得ていきます。
なぜ、4つの視点が必要なのでしょうか。理想のブランドの姿として、まず自社のありたい姿と、顧客からの期待が重なる部分がブランドコアの候補になります。その上で、競合が提供していない独自のものが理想のポジショニングとなります。そのひとつの重なる点を目指し、自社、顧客、従業員、社会環境および競合他社について深く知る必要があるのです。
まず自社・競合・社会環境について理解するフェーズについて紹介します。この3 つがセットである理由として、あくまでも「自社」を客観的な視点から知るために、「競合」「社会環境」を知っておく必要があるからです。
自社・競合を知る5つのフレームワーク
これらの情報を集める手段として、「PEST分析/PESTLE分析」「クロスSWOT分析」「3C分析」「4C分析」「ファイブフォース分析」などがあります。これらの分析方法に関して、具体例を上げながらみていきましょう。
PEST分析
PEST分析 とは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の頭文字を取った言葉で、外部環境をこの4 つの観点から理解しようとするものです。この分析を、コンビニエンスストア業界を例に挙げ、分析してみると以下のようになります。
Politics(政治)
・消費税の増税
・営業時間(24時間営業)に関する制限が緩和される
Economy(経済)
・店舗数の増加
・原料価格の高騰
・コロナによって景気が悪くなっている
Society(社会)
・少子高齢化に伴う購買力の縮小
・地方の店舗の収益性低下
Technology(技術)
・セルフレジの開発・普及
・キャッシュレスの普及
コンビニエンス業界には、コストに関わる多くの問題が挙げられます。しかし、営業時間に関する制限緩和やセルフレジの開発・普及によって長時間労働の防止や無人店舗の運営が期待でき、人的コストの削減が実現できるでしょう。こういった分析から、競争力を維持するためにはセルフレジの開発・普及を進めたり、少子高齢化という逃れられない課題に対しては店舗縮小を検討するなどの戦略が考えられます。
PESTLE分析
また、「PEST分析」に加え、環境やリスク分析を行うためのフレームワークである「PESTLE分析」というものがあります。「PESTLE」とは、6つのマクロ環境「政治的要因(Political)」「経済的要因(Economic)」「社会的要因(Sociological)」「技術的要因(Technological)」「法的要因(Legal)」「環境的要因(Environmental)」の英語の頭文字を取ったものです。「PEST分析」にさらにマクロ環境が加えられることで、より高度な環境分析を行うことが可能になります。
SWOT分析
「SWOT分析」とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、
Threat(脅威)の頭文字を取った言葉で、その名の通り、強み・弱み・機会・脅威の4 つを漏れなく挙げることで自社の現状を分析する手法です。このうち強みと弱みはその事業自身が持つもので「内部環境」と呼ばれます。また機会と脅威は社外から与えられるもので「外部環境」と呼ばれます。
実際にトヨタ自動車を例に当てはめると以下のようになります。
Strength(強み)
・世界で強い販売力/ブランド力を誇る
・高い営業利益
・自動運転技術への積極的な投資
Weakness(弱み)
・軽自動車の生産にこれまでそれほど力を入れてこなかった
Opportunity(機会)
・発展途上国における自動車産業の市場拡大
・日本国内では自動運転機能を搭載した自動車を受容する法整備が進む
Threat(脅威)
・日本国内の人口減少に伴い、市場縮小が想定される
・家族形態の変容に伴い、普通車、大型車の需要減少が見込まれる
3C分析
市場を理解するためのフレームワークとして代表的なものが「3C分析」です。3C とは、Customer(顧客・市場)、Company(自社)、Competitor(競合)の3 つのC を意味しています。
実際に任天堂を例に当てはめると以下のようになります。
市場・顧客
・国内外でゲーム市場が大きく伸びている
・2020年からはコロナ禍により、巣ごもり需要の恩恵を受けている
・1980~1990年代の世代は、ゲーム離れが進んでいる
競合他社
・スマホの普及により、幅広い世代がソーシャルゲームで遊んでいる
・クラウドゲームが競合になる可能性がある
・FPSなどコアなファン層を狙ったゲームが増えている
自社
・マリオやカービィなど歴史ある人気キャラクターが確立
・2017年に発売したNintendo Switchがロングヒット
・キャラクターグッズなど、IP(知的財産)による収益も多い
4C分析
4Cとは顧客の購買意思決定に影響を与える4つの要素「顧客価値(Customer Value)」「価格(Cost)」「利便性(Convenience)」「コミュニケーション(Communication)」の4つのCを意味しています。4C分析では、その4つを顧客側の視点で捉え、市場調査を行い、各項目の分析を行っていきます。実際にスターバックスを例に当てはめると以下のようになります。
顧客価値(Customer Value)
・人々が気軽に集える、家庭でも職場でもない「第3の場所(サードプレイス)」で本場のコーヒーが楽しめる
価格(Cost)
・1杯300~500円と比較的リーズナブルな価格設定
利便性(Convenience)
・人の往来が多い都市部の立地に集中的に店舗を出す「Main&Main」戦略
コミュニケーション(Communication)
・接客のクオリティーが高い
・カップにメッセージを書いて提供するなど、スタイリッシュな接客
ファイブフォース分析
さらに詳しく業界の構造を把握するためのフレームワークとして「ファイブフォース(5F)分析」も存在します。
ファイブフォース分析とは、アメリカの経済学者であるマイケル・ポーターが提唱する業界分析手法の一つで、業界の構造を把握するためのフレームワークです。
5つの要素とは「既存競争者同士の敵対関係」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」をさしています。この5つの要素を一つ一つ把握し、力関係が弱ければその業界の収益性は高く、強ければ収益性は低いということになります。
この分析を行うことで、自社が属している、またはこれから参入を検討している業界の現在の状況を明らかにすることができ、より一層深く現状を理解することができるのです。
4C分析に引き続き、スターバックスを例に当てはめると以下のようになります。
既存競争者同士の敵対関係
・タリーズやドトールなど、業界内の競合他社の脅威は強い
新規参入者の脅威
・他の飲食店がコーヒーやデザートに注力するなど、新規参入の脅威が強まるリスクがある
代替品の脅威
・コンビニのコーヒーなど、代替品の脅威は強い
売り手の交渉力
・原料の仕入れ先は数が多く売り手の交渉力は弱いものの、好条件の土地や店舗については売り手の交渉力が強い
買い手の交渉力
・コーヒーを購入できる店の選択肢は多く、買い手の交渉力は強い
顧客を知る2つの手法「定量調査」と「定性調査」
次に、顧客視点での現状分析では、顧客から見た現状のブランドのイメージや強み、課題、理想の姿についての理解が必要となります。では、いざ自社ブランドを知る顧客の調査を行うとしたとき、どういった顧客に調査を行うことがふさわしいでしょうか。
顧客は大きく3 つに分けられます。過去の顧客、現在の顧客、未来の顧客です。現在の顧客はそのままの意味ですが、過去の顧客は、離反してしまった顧客を指し、未来の顧客は、これから自社として付き合っていきたい顧客像になります。これらのどの顧客に対して、ブランド調査を行うかは、ブランディングの目的によって異なります。
例えば、
- 失ってしまった既存顧客を取り戻したい→過去の顧客を多めに対象とする
- 現状の顧客を中心にブランドとしての成長を図っていきたい→現在の顧客を中心に
- 新たな事業展開やブランドイメージを形成していきたい→未来の顧客がメイン
というようになります。いずれをメインにするとしても、最低限2つ以上の顧客(現在と未来など)をバランス良く対象とすることで、より客観的なブランドの把握につながることも意識しておきましょう。この顧客調査には一般的に「定量調査」と「定性調査」の二つがあります。
定量調査とは認知度、評価、購入意思など数値化でき、表に表れやすいことを調査するための手法です。また定性調査は、価値観や考え方など数値化しにくかったり、動機や理由など潜在的な要素を調査するための手法です。
一方で、定性調査にある潜在意識を行動観察から読み取ることが難しい場合に用いられるのが「ビジュアル投影法」による調査です。
潜在意識とは、言語化が難しいことをイメージで捉えている領域と考えることができます。「ビジュアル投影法」は、調査相手にまず頭の中にイメージを思い描いてもらい、たくさんの画像の中から、それに近いものを選んでもらうという方法です。これにより言葉だけでは捉えにくい考えや感情を引き出すことが可能になります。
具体的には次ページのような画像を複数用意し、その画像の中から、「30 秒で最もこの企業らしいものを選んでください」、「その理由は何でしょうか」という質問を投げかけていきます。そうすることで、実はこんなことを思っていたなどの記憶が刺激され、より深いブランドに対するイメージを把握することができます。
弊社でブランドコアの決定をお手伝いする場合のポイントは、より潜在意識に近いイメージを探ることができるために行う「ビジュアル投影法」にあります。これは下のように画像を複数用意し、その画像の中から、「30 秒で、最もこの企業らしいものを選んでください」、「その理由は何でしょうか」という質問を投げかけていくというものです。そうすることで、実はこんなことを思っていたなどの記憶が刺激され、より深いブランドに対するイメージを把握することができます。
定量調査・定性調査を終えると、下記の情報が見えてきます。
- 自社ブランドのユニークなポジショニング
- 自社ブランドを差別化するための戦略を策定する手がかり
- イノベーションにつながる潜在ニーズ
- 顧客から見た自社の現状のブランドイメージや強み
- 上記イメージに至った理由や重要なタッチポイント
- 顧客が本来自社のブランドに期待すること
- 顧客自身のジョブ・ゴール(顧客自身は何を成し遂げたいのか)
これらを、自社・競合・社会環境について理解するフェーズで検討した仮説と比べ、一致していたことがあれば、それはおそらく顧客からも期待されている要素となるため、今後ブランドとして強めていくべきものとなります。
反対に、顧客とのギャップがあったものは、これまで自社で見えていなかった魅力や期待となります。仮説で立てた目指すブランド像について、何らかの見直しや改善が必要となるでしょう。このような視点で、顧客調査での情報から出た気づきをできるだけ多くリストアップし、それがこの後検討する自社ブランドとは何者かを示す「ブランドコアの定義」での大きなヒントとなります。
手順③ブランドコアを定義する
ブランディングの実施において欠かせないのが「ブランドのコアの設定」です。この「ブランドのコアの設定」を行い、それを軸に全ての接点で一貫した取り組みを行うことで、結果的に確固たるブランドを確立することができます。言い換えると、このコアがしっかりと設定されていないままブランディングを行ったとしても、それぞれの取り組みに一貫性がなく、ブランドが確立されないばかりか、自社が意図していないようなブランドとして認識されてしまうことにもつながります。
これまで紹介してきた現状調査を経て、ブランドコアを定義していきます。ブランドのコアは企業としての志を定める「 P-MVV」と、ユーザーにとっての価値を3つの視点で定める「ブランドベネフィット」を定めることが必要です。これらは企業内の人間の思いがベースとなるため、社内メンバーにおけるワークショップ形式で議論を重ねながら作り上げます。
ワークショップは多くの場合4 つのフェーズに分けて行われます。パーパス、ビジョン、ミッション、バリューに対応します。この議論を通じて、下図のワークシートに言葉を埋めていくことで、P-MVV は形作られていきます。
ここまでを行えば、あなたのブランドが何者で、何を目指し、どんな価値を提供しているのかが非常に明確化されたのではないでしょうか。さらにブランドを明確化するために、これらの要素を1つのメッセージとして第三者に説明できるよう、ストーリー立てしておくとよいでしょう。といっても考えにくいと思いますので、下図のワークシートのようなフレームワークを生かし、コピーライターになった気持ちで考えてみてください。
さらに、ブランドの世界観を定義する必要もあります。これは定めたブランドにステークホルダー(主に顧客、従業員、他には株主、取引先、社会など)が触れたときに、どんな形容詞を感じてもらいたいかを考え、それを明確化するというステップです。
メッセージと世界観の2つが決まれば、ブランドのコアの定義は完了になり、これでブランドコンセプトが決定したことになります。ここから、定めたブランドの姿を社内・社外にどのようにして共有していくかというステップに移ります。
手順④インナーブランディング / アウターブランディングの実施
いよいよ発信・浸透に移ります。ブランディングにはインナーブランディングとアウターブランディングの2つの手法があると説明しましたが、まずはインナーブランディングを進めて、ある程度社内に浸透してからアウターブランディングを始めるという段取りが理想的です。と言うのは、社内に浸透しないうちに社外へブランディング活動を行っても、一貫性がなくなってしまい、顧客に混乱を与えてしまうからです。
改めてインナーブランディングとはどんな取り組みかを定義すると、「『ブランド定義』で定めた『会社の目指すべき方向性』や『顧客に抱いてほしいイメージ』を社員に浸透させる取り組み」となります。
まず初めに大切なのがMI(マインドアイデンティティ)と言われる理念の統一です。これは企業理念や P-MVVを通じて、企業がどのような考えで、どのように社会に貢献するためにビジネスを行っているのかを表したものになります。
そして理念の統一が行えると、次に必要なのはBI(ビヘイビアアイデンティティ)と言われる行動の統一になります。これはMIを実際の行動に結びつける実践的な基準を言語化したものとなります。これにより、個々の活動の判断基準となる指針が明らかになり、より統一感のあるインナーブランディングが可能となります。
インナーブランディングのツールで代表的なものだと、「 P-MVV」や「ブランドベネフィット」などのブランドメッセージを落とし込んだクリエイティブであるブランドブックやムービー、クレドブック、社史などがあります。社内コミュニケーションの活性化をはかり、社内向けノベルティを作成したり、社内イベントの開催、社歌の制作なども考えられます。
インナーブランディングに終わりはありません。トップやブランディング担当者が変わっても、会社や事業、すなわちブランドがある限り継続するものです。そのため、このような施策などを通じて、従業員が現在どういった状況にいるか(①共有レベル ②理解レベル ③自分ごと化レベルに達しているか)をアンケートなどを通じて、定期的に把握することが大切です。その結果をもって、さらなる浸透施策を打っていく必要があります。
アウターブランディングとは、インナーブランディングの定義にならって言うと、「『ブランド定義』で定めた『会社の目指すべき方向性』や『顧客に抱いてほしいイメージ』を社外に浸透させる取り組み」だと言えます。ブランディングはあらゆるブランド・タッチポイントで醸成されますが、これらの取り組みを全てブランドとして一貫したメッセージや世界観で発信する必要があります。しかし一つひとつを改善するだけでは一貫性を取ることは難しくなってしまいます。そのため、まずはこれらの取り組みを顧客の視点から見える化した「カスタマージャーニーマップ」の作成をお勧めします。
顧客が、まずブランドを知り、他の商品との比較、問い合わせや来店など様々な行動をした後に購入し、購入後もアフターサポートを受ける、こうした一連の顧客の購買行動をカスタマージャーニーと呼んでいます。カスタマージャーニーを図解したものをカスタマージャーニーマップと言います。
顧客視点でカスタマージャーニーを考えるために、まずはペルソナを設定することが一般的です。ペルソナとは、ターゲットである顧客を具体的にイメージしたものです。人柄やライフスタイルにまで踏み込んだリアルな人間像を設定することによって、カスタマージャーニーマップを作成する側も感情移入することができ、顧客の視点でものが見られるようになります。
一連の顧客体験をブランド体験として洗い出した後、要所要所で「キーとなるブランド体験」をどのように提供するかを考えるとより有用なマップとなります。これをもとにブランド体験の見直しができたら、「ブランドの定義」と「ビジュアルアイデンティティ」の求辰の観点からブランドを統一するルールを作っていきます。「ブランドの定義」ではブランドコンセプトやブランドメッセージの意味などを含みます。「ビジュアルアイデンティティ(VI)」はロゴやブランドカラー、キーグラフィックなどになります。
そしてこれらの定義に則った形で、アウターブランディングの取り組みを実施していきます。その取り組みやツールは、ブランドを想起させるトリガーとなるブランドロゴから、web サイト、広告、イベントまで多岐にわたります。
手順⑤効果検証と改善
ブランディングの取り組みが始まり一定期間が経過したら、取り組みの成果を測定することが重要です。手法としてはユーザーリサーチが主となります。こうした数値をもとに毎年、定点観測を行いながら、どういった取り組みが評価されているのか、より強めるべき取り組みは何かを再考し、新たなインナー/アウターブランディングを推進していくことで、これから先、生き残るブランドになることができるのです。
ブランドコンセプト / ブランドアイデンティティの重要性
上記の手順のなかで最も大切になるのがブランドコアの決定についてです。このコアの部分が不明確なままブランディングを進めてしまうと、後々ブランドの統一感が失われブランドエクスペリエンスが損なわれてしまったり、ブランドのイメージがターゲットによって大きく異なってしまうことに繋がりかねません。
また、ブランドコアを決定したあとの展開についても注意が必要です。例えばアウターブランディングとして発信をする場合、ターゲットとのタッチポイントは数多く考えられます。営業活動などももちろんですが、採用活動のホームページやLP、メディア広告、Web広告、ブログ記事、プロモーション動画、InstagramやYoutubeなどのSNSなど、さまざまです。
そしてこれら全てのユーザーエクスペリエンスにおいて、ブランドコンセプトが反映される必要があります。ブランディングとは一方的に自分達のことを口で伝えるのではなく、あらゆる行動の積み重ねで築かれます。こういった一つ一つの取り組みにおいてもしっかりとブランドコンセプトを反映し、一貫性のあるブランディングを目指すことが重要になってきます。
まとめ
今回の記事ではブランディングの方法と手順についてより詳しくご説明しました。ブランディングを取り組むにあたって、行うことはとても多く、一つひとつのステップが欠かせないものとなります。方法や手順について行き詰まってしまったり、具体的に相談をしたい場合はぜひ弊社にお問合せください。
【参考文献】
『手にとるようにわかる ブランディング入門』(金子大貴著、 一色俊慶著)
MarketingDriven マケドリ/【業界別事例あり】PEST分析とは?やり方も解説します!
https://the-marke.com/media/marketing-pest/#index_id13
Keywordmap ACDEMY/SWOT分析とは?事例から方法やコツ、注意点を解説
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関西学院大学レポート ブランド研究における近年の展開ー価値と関係性の問題を中心にー
https://core.ac.uk/download/pdf/143635907.pdf